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『子どものための精神医学』滝川一廣

 

第Ⅰ部 はじめに知っておきたいこと 012

 

(1)子どもとは育ちつつあるもの、成長途上の存在である。

(2)子どもとは社会のなかを生きている存在である。

(3)子どもの育みもケアも、マニュアルどおりにはいかない。

 

第1章 〈こころ〉をどうとらえるか 015

 

1 哲学にとっての〈こころ〉、科学にとっての〈こころ〉

 ・なぜ「やっかい」な問題なのか

2 精神医学にとっての〈こころ〉

 ・〈精神〉を扱わぬ科学として ・果たしてどこまで見えるのか

3 日常生活にとっての〈こころ〉

 ・すれちがい、重なりあうものとして

4 〈こころ〉は共同の世界

 ・主観の世界でありながら共同の世界

5 「精神障害」という〈こころ〉のあり方

 ・かかわりにおける苦しみ ・精神障害の本質

===「障害」という言葉 022

 

第2章 「精神医学」とはどんな学問か 025

 

1 精神医学の誕生

 ・「自由で、主体的で、合理的な人間」という人間観 

 ・3つの非合理的存在(A)犯罪者という存在(B)子どもという存在(C)近代以前は「狂気」という概念でとらえられていた存在 

 ・児童精神医学の独特の位置(A)矯正の対象(B)庇護と教育の対象(C)医療の対象

2 精神医学の黎明期

 ・モラル・トリートメント ・分類と診断へ

3 精神医学は「理系」か「文系」か

 ・「脳の病気」という宣言

4 正統精神医学

 ・自然科学という自己規定 ・失語症の研究 ・進行麻痺の研究

5 力動精神医学

 ・非合理なこころに焦点をあてる ・こころは扱えるのか? ・「かかわり」のなかでこころを見る、という方法 ・フロイトの「無意識」概念 ・サリヴァンの対人関係論

6 児童精神医学のはじまり

 ・遅い誕生 ・最初の臨床―アヴェロンの野生児 ・児童精神医学のテーマがすでにそこに

 

第3章 精神障害の分類と診断 043

 

1 分類とはどういうものか

 ・何を基準にするかで変わる ・症状から物的証拠へ

2 伝統的な診断分類

 ・心身二元論による分類―外因と内因

(A)脳組織そのものになんらかの実体的(物質的)な異状が起きているもの。要するに脳障害。

(B)脳組織ではなく、心理メカニズムのほうになんらかの機能的な異状が起きているもの。要するに心理障害。

 ・第三のカテゴリー―内因の登場 ・3つの引き出しに整理する ・伝統的診断分類の弱点

3 操作的診断分類

 ・症状でグループ分けするというアイデア ・マスとしては使いやすい ・米国のローカル基準が世界を席巻

===多動性障害 Hyperkinetic Disorders 051

4 児童精神医学における診断分類

 ・おとなのジャケットは着れるのか? ・子ども用の大きな引き出しをつくる ・診断をめぐる4つの混乱

5 精神医学での「診断」とは何か

 ・行動のあり方を見る ・マジョリティからの「ずれ」を見る [1]身体医学の「診断」とはちがう [2]診断にぴったりあてはまらない [3]診断はできなくても援助はできる [4]診断には意味がある

6 「診断」のもつ意味

 ・「納得と安心」の力がある ・しかし治療の入場券に過ぎない

 

第4章 「精神発達」をどうとらえるか 065

 

1 なぜ決定版がないのか

 ・社会のあり方で変わる ・すべてはカバーできない

2 認識の発達、関係の発達

 ・「知ること」と「かかわること」

(A)まわりの世界をより深く、より広く知っていくこと(認識の発達)

(B)まわりの世界とより深く、より広くかかわっていくこと(関係の発達)

 ・人間世界の固有性―観念の世界を生きる

3 「認識」と「認知」の区別

 ・ネズミは「認知」するが「認識」しない

4 精神発達の基本構造

 ・認識は関係に支えられる ・関係は認識に支えられる ・ピアジェはY軸、フロイトはX軸

 

第5章 ピアジェの発達論 073

 

1 同化と調節

 ・外部環境を取り入れ、それにあわせて自分が変わる ・発達の原動力としての「均衡化」

2 知性の発達

 ・知性を中心におく近代的人間観

3 シェマ

 ・哺乳びんを見て喜ぶ乳児には何が起こっているか ・能動的・主体的な世界のとらえ ・しかし関係がみえていない

4 発達の4段階

(1)感覚運動期 ・「認知」的なシェマがつくられる ・「論理の土台」が準備される

(2)前操作期 ・「認識」的な知性がはたらきはじめる ・「永遠」はあっても「保存」はまだない ・相手の視点から見ることはできない

(3)具体的操作期 ・算数ができるようになる

(4)形式的操作期 ・抽象的な概念操作ができる ・一方で「地に足がついていない」

5 精神発達の最終段階

 ・数学的知性としての論理 ・論理と心理が一致する!?

 

第6章 フロイトの発達論 085

 

1 小児性愛

 ・愛撫的かかわりへの欲求 ・双方向性・一体性が鍵 ・性愛は、共同性へ向かう原動力

2 リビドー

 ・仮想上のエネルギー ・思いが何に向けられるか

3 発達の5段階

(1)口唇期 ・親子の交流のチャンネル

(2)肛門期 ・社会的存在への第一歩 ・主体的・能動的なコントロールへ ・意志の力

(3)男根期 ・父母との三角関係をどうクリアするか ・葛藤とその乗り越え

(4)潜在期 ・家の外に目が向く時期

(5)性器期 ・成人性愛の世界へ

第Ⅳ部 社会に出てゆくむずかしさ

 

第16章 児童期~思春期をめぐる問題 375 

 

(A)身体としてのおとな (B)社会人としてのおとな (C)心理的なおとな

 

1 児童期とその発達課題

 ・小学校という場 ・only one から one of them へ ・学びの世界と遊びの世界 ・「小さなおとな」へ

2 思春期とその発達課題

 ・待機と準備の時期 ・思春期の矛盾と困難 ・矛盾の回避へ

3 思春期の〈性〉の問題

 ・性非行、性犯罪(戦後) ・不純異性交遊(60年代) ・性の自由化(70年代) ・性的関係世界の回避へ ・不自由な〈こころ〉を受け止められるか

4 不登校現象のはじまり

 ・高度成長とともに長欠率は減少 ・新しいタイプの長欠―休みそうもない子の欠席 ・思春期の不登校

5 不登校現象の増加

 ・一般性の高い現象になった

6 学校へ行く意味

 ・公教育のはじまり ・なぜ学校は社会に浸透したか ①高い識字率 ②身分制度の解体 ③豊かさへの唯一の道 ・学校は尊い場所だった ・高度成長期に子育てと教育がリンクした

7 現代社会の不登校

 ・豊かさという目標が達成された ・不登校が増えたわけ ①学歴価値の低下 ②学業と労働のギャップ拡大 ③学校での心理緊張の高まり ④学校の聖性消失 ・「社会の変化」が要因である

8 不登校への具体的対応

(1)専門家としてのかかわり ・負荷を軽くする支援を ・試行錯誤を応援する ・バイパスを探す

(2)家族としてのかかわり ・安心して家にいられるようにする ・家をよきベースキャンプに ・密室化させないための専門家

(3)教員としてのかかわり ・見捨てていないというサインを ・家庭訪問のポイント ①不意の訪問は避ける ②理由など聞かない ③無理に会わない ④定期的に訪問する ⑤おとなとのかかわりを体験してもらう  ・カウンセラーとはちがう役割がある

9 子ども同士の関係の失調(いじめ)

 ・いじめの現在 ・中学生で5%、高校生で2%がいじめ体験

10 伝統的な「いじめ」と80年代からの「いじめ」

 ・「いじめっ子」によるいじめ ・「おとなが出る幕」ではなかった時代 ・「もはや殺すしかない」(60年代) ・主戦場は学校に ・グループ内の相互作用としてのいじめ(80年代) ・なぜ深刻化しやすいのか

11 「いじめ」の変化とその社会的背景

 ・階層秩序社会のいじめ ・平準的な大衆社会でのいじめ ・均質性から外れることへの恐怖 ・あらたな階層性―スクールカーストの時代

12 規範意識と「いじめ」

 ・子どもの正義 ・社会的規範から感性的規範へ ・感性的規範には基準がない

13 学校ストレスと「いじめ」

 ・慢性的なストレス感をどう解消するか ・「いじり」「ひやかし」「からかい」が限度を踏み外す ・だれもがいじめ、いじめられる

14 「いじめ」への対処

(1)子ども同士の対処 ・半分はアクションを起こしている ・理にかなった勇気あるアクション ・最大の資源を見逃していけない

(2)教員による対処 ・教員の努力に焦点をあててみる ・いじめの対応はなぜむずかしいか ・困難ケースになる3つの条件 ①学級崩壊など高い波風に全体が揺れ動いている状況で起きている場合 ②いじめられる側の子どもがなんらかの負荷要因(たとえば発達障害、親子関係不調など)をもっている場合 ③起きている現象を単純な「被害vs.加害」の対立図式に押し込めて対処がはかられようとしたり、そのような対処が強いられた場合

(3)家族としての対処 ・何より冷静さが必要 ・真相より安心を ・わが子がいじめる側になっていたとき ・おとなの争いにしてはならない―二分法から自由に

(4)いじめられた子に対する支援とケア ・まずはルールづくり ・孤立無援感から子どもを救う ・あなたはよく闘った! ・いじめだけに目を奪われない

 

第17章 その他の精神医学的な問題 435

 

1 子どものうつ病

 ・なぜ子どものうつ病が増えたのか ・症状だけで診断されるようになった ・負荷条件が大きく変わった―勤勉から社会性へ ・人間関係疲れ? ・薬はファーストチョイスではない

2 子どもの「神経症性」の障害

(1)場面緘黙 ・いくつかのタイプがある ・自意識のなせるわざ ・家ではしゃべる子の場合 ・いきなり言語交流を求めない

(2)強迫症 ・不安がもたらすイマジネーションの病 ・「確認」の繰り返しはエスカレートする ・具体的な支援策 ①底にある不安への対処をはかる ②イマジネーションと強迫行為の悪循環を断ち切る ③薬による支援

(3)パニック障害 ・児童期にはまれ ・薬物療法+無理を減らしてあげる

(4)対人恐怖 ・中間距離が苦手 ・近代的自意識の背のび ・one of them と only one のせめぎあい ・軽症化してひきこもりへ

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