「政党政治における個と集団」 2018/5/20
小浜逸郎
「人間関係のあり方を二つに分ける」
Ⅰ 「私」はどんな集団に属しているか(アイデンティティ)
①家族:最も基礎的。人格形成の培養地。
②親族:婚姻関係の重視。かつては相互扶助機能が強かった。内外の紛争の種。
③学校:知識・技能の育成の場だが、近代以降の重要な人間関係形成の場でもある。
④地域:村落共同体の相互扶助機能。都市社会化に伴ってその意味が薄れる。
⑤職業:社会人として認められるための具体的な印。 "What do you do ?"
⑥国家:領土、慣習、文化、言語などの同一性の観念を中心に作られた公共体。最も抽象的。
⑦階級、政党、宗教、人種、民族、語族、人類――国家の同一性と必ずしも重なり合わない。
Ⅱ 集団のまとまり(共同性)についての説
①ヘーゲル(1770-1831):ドイツの哲学者。
a.家族・市民社会・国家→より自然な共同性からより観念的な共同性への発展。
b.この説のよい点:個人の成長過程に見合っている。国家の役割を的確に指摘。
c.この説のよくない点:原理の違う共同性を強引に結びつけている。
②テニエス(1855-1936):ドイツの社会学者。
a.ゲマインシャフトとゲゼルシャフト:血の通った共同性と利害中心の冷たい共同性。 伝統社会から近代社会への発展にともなって前者から後者へ移行してゆく。
b.この説のよい点:二分法で二つの社会の特徴をわかりやすくとらえている。
c.この説のよくない点:①と同じ。「移行」は必ずしも起きていない。
Ⅲ 人間が作る二つの関係の原理
①エロス的関係
a.個体(身体)を「特定のこの身体」としてとらえて気にかける。
b.それぞれは、固有の名前をもち、かけがえのない存在として関係を作る。
c.この関係は、人間関係として第一次的、自然的。
d.この関係は、情緒の絆で結ばれる。外に目的を持たない。
e.具体例――親子、兄弟、夫婦、友人、恋人その他。
②社会的関係
a.個体(身体)を「一般的な身体」としてとらえる。それぞれの個体には「社会的役 割」が配分される。
b.この関係にかかわる個体は、相互に取り換えが利く。
c.この関係は、人間関係として第二次的、間接的。
d.この関係は、ある合理的な目的のために人為的に結ばれる。
e.具体例――企業の職場関係、軍隊・政党・政府などの組織における関係その他。
③エロス的関係と社会的関係の関係
a.「社会」は「エロス」だけでは生きられない人間のあり方を補完するもの。
b.生まれたときはエロス的関係のみ。しかしこれは多かれ少なかれ挫折を味わう。
c.人間は、みな二つの関係を背負って生きる。
d.二つの関係領域は相互に混じり合う
*例:家族関係(エロスが主、社会が従)。職場関係(社会が主、エロスが従)。